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研究プロジェクト

現在の研究分野

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神経系における生命情報多様性獲得メカニズムが支配するシナプス機能の解明

​シナプスの形態、機能的多様性と可塑性の仕組み

 (Cell., 2011; J. Cell Biol., 2014; Science., 2016; iScience., 2019; J. Biol. Chem., 2023など)

高等動物の神経系において、生命情報の多様性を生み出す主要なメカニズムのひとつが「選択的スプライシングによるRNAレベルでの多様化」です。これは、単一の遺伝子から複数の遺伝子産物を生み出すことで、限られた遺伝情報から複雑な構造と機能を可能にする仕組みであり、脳の高次機能とも深く関係しています。

 

私たちは、神経系における選択的スプライシングの制御機構を明らかにし、その結果として生じる分子多様性がシナプス機能にどのように関与しているかを研究してきました。特に、STARファミリーに属するスプライシング因子(SAM68, SLM1, SLM2)に注目し、それらが制御する神経特異的スプライシングプログラムとシナプス可塑性との関係を明らかにしてきました。今後は、こうしたスプライシング制御の破綻がどのように神経疾患の発症に関わるか、その病態メカニズムの解明に取り組んでいきます。

ストレス応答性スプライシング制御による神経軸索部の適応的可塑性の解明

脳レジリエンスを制御する新たな分子機構の探究

(Sci. Rep., 2017; Frontiers. Mol. Neurosci., 2019, BioRxiv., 2023)

神経可塑性には多様な側面があり、学習や記憶と関連するシナプス可塑性のみならず、加齢や疾患、ストレスなどの外的要因による適応的変化も含まれます。これらは、生涯にわたり脳機能を維持する「レジリエンス機構」として働き、その破綻は神経変性疾患に加えて、てんかん、うつ病、不安障害、統合失調症などの多様な疾患の発症に関与していると考えられます。

 

私たちは、こうしたレジリエンスに関わる可塑性が神経軸索部で生じており、特に軸索根元にある軸索起始部を構成する分子の微細なスプライシング制御によって支配されている可能性を見出しています。現在、ゲノム編集などの先端技術を活用しながら、ストレス応答と神経回路の可塑性をつなぐ新たな分子基盤の解明を進めています。

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自閉スペクトラム症 (ASD) における普遍的分子病態の解明と治療の開発

 ASD発症の起源を探る (PLoS ONE., 2015; Sci. Rep., 2016; In review., 2025)

自閉スペクトラム症(ASD)は代表的な神経発達症であり、遺伝的背景に加えて多様な非遺伝的因子が関与し、病態もきわめて多様かつ複雑です。そのため、ASDに共通する普遍的な発症原理を見出すことは、長年にわたって困難とされてきました。

 

私たちの研究グループでは、ASDを引き起こす原因を分子・細胞レベルで追究してきました。近年、代表的な遺伝性および非遺伝性ASDモデルの発生段階において、細胞運命決定に関わる情報伝達経路の異常を同定し、それに伴う神経系細胞系譜の乱れが、成熟脳における興奮性/抑制性入力の不均衡など広汎な神経機能障害とASD様症状を引き起こす可能性を見出しています。

 

今後は、ASDの多様な病態を発生学的観点から再定義し、疾患の普遍的な起源を特定することで、根本的な治療法の確立につなげていくことを目指しています。

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©2021 by 東海大学医学部基礎医学系分子生命科学領域。Wix.com で作成されました。

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